泣いてください
音楽は人の内面を真っ直ぐに真正面からぶつけて表現したものが多いから、もちろん深い悲しみや絶望を表したものも多い。
どちらかというと、そちらの分野を長年得意としていたので、だけれど音楽で絶望を表したり泣き続けるのはかなりしんどい。それなので再来週末のコンサートのプログラムには1つも人生の辛さを主に表そうとしている曲はあえていれていなかった。
コンサートを聴いている方達だってそのジャンルの音楽をどう受け止めているのかわからないし、日常だって幸せなことばかりではないだろうから楽しい曲を聴きたいのではないかなって。
この10年間「元気」になるために頑張って来たのを振り返って、そういう地道な努力(自分で言うのもおかしいのだけれど)が反映されたプログラムを共演者二人の友人と特別に選んでおいてある。
シューベルトの音楽だって、繊細でくじけそうになる自分を自分でいたわってあげるようなけなげさがかしこにうかがえるし、ドビュッシーだって世界の美しかったり、おどけていたり、夢を見るような気持ちを表現しているし、ブラームスなんかも一見(一聴?)感傷的に聴こえて、でも実際はノリノリだ。
ところが昨日、ショパンのあるノクターンを「絶対に」弾いてほしいというリクエストがあり、プログラムに追加される事になった。
「泣いているところを見せて欲しい」というリクエストである。
得意と言えば得意なのだからわからない気もするが、お断りすることができなかったので「泣く姿」をまた今回のコンサートでも"お聴かせ"する事になり、少々複雑な気持ちでいる。
*写真は「あーまたやっぱり泣くことになったか」とちょっとだけ途方にくれている自分の前で、もっのすごい勢いで砂浜に穴を掘るチャーリー。やんちゃで頼もしい。