Blog / 木村智明のブログ
2017年9月 8日

ロンドン

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ケンジントンにある 5,000人以上聴衆が入る アルバート・ホールでは、夏の間 毎日プロムナード・コンサートという クラシック音楽中心のイベントが行われる。

ローマのパンテオンと同じ巨大な円形型のイベントホールで、大きなオーケストラが 大きな音で演奏する マーラーの交響曲などを 聴けるのは 楽しみだ。

今年は イギリスBBC交響楽団の2番、アムステルダム・コンセルトヘボウの4番、ピッツバーグ交響楽団の1番を 聴ける機会に恵まれた。

オーケストラの真横で聴けた2番も 感動したし、 少しおとなしめだった4番では演奏の難しさを考えさせられたし、数日前の1番の エキサイティングで スリリングな 素晴らしい演奏会の後、会場にいた 沢山の人が 幸せそうな顔を しているのを みられて、このイベントが これからも ずっと 毎年 人々のために 続いていってほしいと 強く願う。 

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3歳半になるチャーリーは いつも 田舎の生活で ほとんど 羊しか 見かけないので、大都市に住む 犬たちに 会える ロンドン滞在が 大好きだ。

あまりにも楽しみらしく いつもより早く目を覚まし 結果 毎朝 6時半に ハイド・パークへでかけることになる。

足の速い犬に 追いかけられる遊びを ものすごく喜んでいるチャーリーを眺めながら、田舎でも 遊び友達を 作ってあげようと思う。

それにしても、なんといきなり 夏が終わってしまったことだろう。 

空気も、光も、全てから 秋を感じる。

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今週のリハーサルは、11月のロンドンと日本でのコンサートの準備。友人の経営するレンタルスタジオで。

マットとのリハーサルは フォーレのエレジーと シューマンのアダージョ&アレグロ。

少しづつ、彼が自然に持つ おおらかなテンポに慣れ始めてきて ホッとしている。

ここ一ヶ月くらい、マットが好むゆっくりめなテンポ設定の中で 自分には何ができるか 少々悩んでいたのだけれど、先週末のリハーサル中に「あ、何かが生まれてきている!」と感じられ 嬉しくなる。

マットとのであい。

チェリストのマットを 初めて見かけたのは 4-5年前、弦楽器オークションのエキシビションだった。

暖かい瞳と クリクリしている髪を持つ 彼を、南ヨーロッパの人かなと 思ったのを 覚えている。マットに自分のことを何人だと思っている?と聞くと イギリスで生まれた イギリス人だと彼自身はいう。

イギリスで育った 音楽学生は、オーケストラ入団を目標に することが多いのだけれど、激しい競争率と 過酷な労働条件は大変だ。 所属後はオーケストラ以外の演奏活動の可能性を絶たれてしまうことも 多い。

そんな 将来を 悩んだ学生時代のマットは、恩師である 演奏家たちにも相談して、自分の求める演奏活動を 続けながら 副業として、オークションハウス ディーラーとして 働く道を選んだ。

弦楽器を見るのが 大好きな僕は、10年前位からオークションのエキシビションがあれば 一目散に出かけて行っているので、数年前のそんな ある日に ディーラーとしても働き始めた マットに出会った。

 展示されているチェロを 弾いてくれて、なんと 素晴らしいチェリストだと 思った

 演奏活動もディーリングも、楽しそうに 取り組んでいる彼をみて、人生の選択を きちんとできる人なんだなと 感心する。マットを見ていると、自分の若い時などは 感情に任せるままのチョイスをして、失敗ばかりしていたのではないかと感じずにはいられない。

 マリアとの出会い

   マットに前々から マリアという素晴らしいバイオリニストがいるから、トリオをやらないかと誘ってもらっていた。3人行動というダイナミックスが 幼い頃から苦手な僕は、もちろん ピアノトリオを 演奏するのは 絶対不向きだと 思っている。 

 ではデュオで「遊びで弾いてみましょうよ!」といってもらったのがマリアとの出会いだった。

 普段 のんびりとしていて、マイペースで 柔らかい雰囲気を漂わせている マリアの音楽は スケールがとても大きい。

 去年の暮れ ポーランドにブラームスのコンチェルトを聴きに行き、フルオーケストラの前で のびのびと、それはそれは楽しそうに 演奏する彼女を心から頼もしく思った。

 「もっとも大好きなジャンル」 だと言う 室内楽にも 大きな才能を発揮する。一緒に弾いていると 音楽の 可能性が 広がっていって 面白い。

 火曜日の シューベルトの グランドデュオを リハーサル中、自分のワルツのリズムの取り方に ワンパターンな、今まで気づかなかった 癖が あることを 発見する

 マリアは 2拍目にほんの僅か時間をかけ、僕は3拍目の最後をほんのわずか急ぐ。

 音楽作りが柔軟な マリアが 僕の弾き方に あわせてくれてしまう前に「そのまま 何回か 弾いてみてもらってもいい?」とお願いし、マリアの自然な流れにあわせて 弾いてみる。

 「あー、ここ ちょっと ノンビリに なっちゃったわねぇ。」とマリアは すぐに 反応したけれど、僕はとても素敵に一変したと思った。

 「ゆったり弾こうよ、ここ。こういう風に弾きたい。」と 嬉しくなる。

 40年間近くピアノを弾いているけれど、この「間」の取り方は 多分 たった一度とも した事がなかった、と、その発見が嬉しかった。

 自分は緊張感の高い音学をいつも 求めすぎている。たっぷりした感じも一人で弾く時にも応用してみようと、少しワクワクする。

 ドビュッシーが「大好き」というマリアの希望で、日本での演奏会のプログラムに数曲取り入れることになり、今週はその最終決定も目標に 何曲か 試してみた。

 二人とも 大好きな「Beau Soir」だけは決まっていたので残りの2曲を選ぶ。

 ユーモアのある「ミンストレル」と有名な「亜麻色の髪の乙女」に決まる。

 マリアとは9月の末にロンドンでも演奏会があるので、少々準備時間的に不安な僕とは正反対に 余裕のマリア。頼もしいけれど、自分は練習を少し増やそうと 密かに 思っている。

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 リハーサルの後は、普段は いつもコーヒーとケーキばかりが 多いが、最近「少し痩せたい」と思っている3人全員の希望で 今週は パブへ。

 レンタルスタジオから歩いて1分もかからず マットとマリアも住むお洒落なマリルボーン地区。その地域はパブも可愛らしく、ロンドンという大都市のオシャレで リラックスした人たちがくつろいでいる。

 二人が大好きだというビールが売り切れで、しょうがないと言いながら2番目に好きだというとビールを オーダーしてくれるマットと、一番好きなビールが飲めないのをさぞかし残念そうにしているマリアを見比べながら、人生のいろいろに こだわりのある 素敵な若い友人を持ったものだなぁと 朗らかな気持ちになった。

 チャーリーも 街の公園で 沢山の犬と遊べて 大喜びだし、自分も 一緒に 刺激を 受けに、もっとちょくちょく 来ようと思った 今週のロンドン滞在だった。

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マシュー・フーバー

チェリスト

イギリス生まれ。ロンドン在住。

ロンドン王立音楽院、ノーザン王立音楽大学、ニューヨーク・イーストマン音楽院、ブリュッセル・エリザベート王妃音楽大学にて、スティーブン・イサリス、ミクロス・ペレーニ、ギャリー・ホフマン、ラルフ・カーシュバウム、スティーブン・ドーンらに師事。

クラシックだけでなく古楽器奏者としても活動し、ヨーロッパ各地での演奏会や音楽祭にてソリスト、室内楽奏者として演奏、多くの名演奏家と共演。

使用楽器は銘器フランチェスコ・ルッジェーリ作チェロ(1685年製)

www.matthewhuber.co.uk

マリア・ヴォシュチョヴスカ

バイオリニスト

ワルシャワ生まれ。ロンドン在住。

ワルシャワ国立ショパン音楽大学、ロンドン王立音楽院にて学び、レオニードカーベル、マクシムヴェンゲロフらに師事。

ベラルーシ共和国・エルスキー国際コンクール優勝。世界的権威のあるヴィニアフスキー国際コンクールにては唯一の母国ポーランド人としてファイナリストに選ばれ入賞、多数の副賞を受賞。

これまでにソリストとしてロンドンウィグモアホールなどヨーロッパ各地やアメリカでリサイタル、室内楽コンサートに出演し、マクシム・ベンゲロフ、ロバート・レヴィン、フィリップ・グラッファン、今井信子等と共演。またヨーロッパ各地で多数のポーランド国立オーケストラとコンチェルトソリストとして共演する。

使用楽器は銘器ピエトロ・グゥアルネリ作バイオリン1715年製と銘弓フランソワ・トゥルト作"Exヨアヒム"

www.mariawloszczowska.com